来年の開業10周年を前に ちょっぴり途中下車

昨年はフルーツワールド便りの発行が少なく、多くの方から「便りがないが元気にしていますか」との連絡を頂きました。ご心配をお掛けし申し訳ありません。

昨年を振り返りますと、私事になりますが9月に前立腺ガンが見つかり、その後の計画を大きく変更せざるを得ない事態になりました。治療期間中は時間の余裕もあり、フルーツワールド便りの原稿も書きましたが、仲間より文の内容が暗すぎるということで発行に至らず、更に遅くなってしまいました。私の置かれている当時の生活環境を考えますと、暗い文章になっても仕方なかったかと思い、新たな気持ちで便りを書いております。

今では、ガンの発見は「不幸中の幸い」であったと振り返る余裕もでておりますが、ガンの発見当初は当然のことながら揺れ動く不安定な精神状態の時もありました。体調も良く自覚症状が全くなかったなかで、グアムの医師より「手術をしても5年の生存確率は50%だ。」との説明を受けたこともあり、そのショックは計り知れないものがありました。

昨年9月から今年の1月末までグアムを離れハワイで治療に専念しておりました。その間、多くの皆様にご心配をお掛け致しましたが、ガンは幸運にも初期の段階であり、手術も成功に終わり予期されていた後遺症もありません。2月いっぱいは出来るだけ無理をせず3月からは以前にも増した健康な身体で仕事に完全復帰したいと思っております。

「一年の計は元旦にあり」と申しますように、今年も更なる目標を掲げ邁進していく覚悟でいます。毎年の事になりますが、自分の思うように物事は進まず、大きな流れの中のほんの小さな一部に自分の存在があることに気付かされます。天災、人災を始め、自分の身体さえ思うようになりません。ガン発見という思わぬ事態から、長い治療期間を通じ、想像もしていなかった貴重な経験をすることができました。自分では全くコントロールできない偶然の繰り返しからいろいろな経験をし、生き方や考え方に影響を与えたりしてくるのも、生きているゆえの楽しみなのかもしれないと思っております。

来年はフルーツワールドを開業し10年目の節目の年を迎えます。この10年間の歳月は余りにも多くの出来事や思い出があった期間であります。それを思う時、多くの人に対する感謝の念で胸がつまります。開業よりフルーツワールド便りや、テレビや雑誌等で主張続けてきたフルーツワールドは利益を目的にして作ったのではないという経営理念は、今でも少しの迷いも狂いもありません。

開墾当時、精神的に追い込まれていく私を見て、仕事仲間や飲み仲間であった友人達が良く忠告してくれたものです。「その膨大な資金を他の事業に投資すれば、苦労しないで遊んで生活できるのに何故しない」と。しかし、幸せというのは物やお金だけが全てではないと言うことを身をもって体験し、自分の生き方に疑問を持ち大きく方向転換を試みていた私には、相手の言い分は非常に良く理解できますが、価値観の違いを感じるのみでした。

自然界を相手にする仕事を選んだのは、他のものに影響されず少しでも自分を見つめ、生涯尽きることのない夢を追いかけられるところだと確信したからに他ありません。期待以上の幸せを自然界より受け、更に夢が膨らみ続けている現状に後悔することは何もありません。

日本のある作家が「桃源郷を求めて」という題で私を紹介してくれた記事がありますが、まさにその心境であり、外部の雑音に惑わされることなく、これからもいろいろな体験や実験を繰り返し、自然の好きな人達に喜んでいただけるフルーツワールドにしていきたいと思っております。来年の10周年を皆様に祝って頂けるよう頑張りますので、今後とも宜しくご支援の程お願い致します。

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濱本久允

ハマモトガーデンズの開拓者 濱本久允は昭和22年に愛媛県で生まれました。オーナー濱本久允の自然に対する向き合い方や思いを綴ってまいります。