ある日、テレビでNHKを見ていたら、空飛ぶニワトリがいるという番組が放映されていた。どれ位飛ぶのかと興味を持って見ていると、せいぜい1メートル位しか飛ばず、ジャンプしているようにしか見えない光景であった。取材している女性は「飛んだ飛んだ」と大騒ぎしている。その女性リポーターが、鶏舎の中であっても自然環境を大切にした環境で育てるニワトリは動きも素早く空も飛び、そこで育てられるニワトリは最高に美味しい鶏肉として高値で販売されていくと説明していた。
チャボに似たニワトリで、テレビで放映されたのと同じニワトリがフルーツワールドには数え切れないほど生息している。元々は私どもが飼っていたニワトリですが、大型台風で鶏舎を飛ばされ、それ以降園内の至る所に住み着いている。畑やジャングルの中、庭園、駐車場など至る所でニワトリを見ることができ、ヒナ(雛)鶏を連れ散歩し、雄鶏が雌鶏を追いかけ回している。なかでも圧巻なのはジャングルの中で峰から峰へ珍しい鳥が飛んでいるなと見ていると何とニワトリが飛んでいる。おそらくイグアナやイノシシに追いつめられ逃げ場を失ったニワトリたちが飛び立って逃げているのだろう。夜、ジャングルへ入ると多くのニワトリが外敵から逃れるかのように、高い木の枝に一斉に止まっている。
日本では些細な事に話題性を見だし、ちょっとした違いで区別し、高級商品として信じがたい高値を付けて販売されている。私の園内のニワトリは、自由に園内を飛びまわり農薬も化学薬品も使用しない自然農法で育てている、高級であるべき野菜や果物を自由に食べて育っている。そのニワトリを日本市場へ持っていけば、幻の鶏肉として、史上最高の高値が付けられ取引されても不思議ではないように思うがどうだろうか。
フルーツワールドのランチでは、工夫を凝らした味付けをし、炭火で焼いたニワトリのバーベキューを提供しているが、お客さんより非常に好評を得ている。そう思ってニワトリを見ていると、やがてこのいたずらばかりしているニワトリが、膨大な収益をあげてくれる金の卵のように見えてくるから不思議だ。なんだか急に目の前が明るくなり、南国の澄み透った青空を自由に飛んでいる人も見えてきた。「アッー!誰か飛んでいるー」。