Never Give Up!! 復興への道

昨年は想像を絶する台風の被害を2回も受け、園内の植物はもちろん建物も全て崩壊し、12月の台風から5ヶ月が過ぎた今も修復されていない建物が残っています。

今までは、台風後一気に回復していく植物達と一緒に、私達も負けずと復興に向け走ってきたのですが、今回はペースを合わす事が出来ません。 時間が過ぎれば過ぎるほど被害の大きさが身にしみ 、片ずけなくてはいけない問題が山積し、走ることが出来ない障害が多く横たわっております。

最近現地の友人たちと会いますと、一瞬躊躇し驚いた表情を見せてから声を掛けてくることがあります。「濱本は台風後農園をやめた」「グアムにいない」と言う噂が広まっており、それが原因しているらしい。いないはずの人が目の前にいれば誰しも不思議に思うのは当たり前の事かもしれません。

台風後の園内は、建物は破壊され、木と言う木は倒れ、どこから手を着けていいのか迷うありさまで、誰が見ても「この状態で再起は無理だ」と結論付けても当たり前であり、根拠のない噂でもないと思います。

台風の後も、数多くの人達が何もない園内を訪れ、苦情を受けることなく、逆に私共が励まされ営業させて頂いている事を感謝せずにはおられません。一日も早く色々な果物を食べて頂きたいという思いが、現在の私の活力になっております。

台風の後も、数多くの人達が何もない園内を訪れ、苦情を受けることなく、逆に私共が励まされ営業させて頂いている事を感謝せずにはおられません。一日も早く色々な果物を食べて頂きたいという思いが、現在の私の活力になっております。

台風後、果物の苗木を始めとして手配できるものは全て手を打ってきました。グアム大学、グアム農林省、ハワイとフロリダの果樹園の4ヶ所と相談し必要な果物の苗木を手配しました。5ヶ月が過ぎた現在、フロリダからの苗木以外は全て揃いました。

満足な良い苗木が手に入り、豊かな気持にさせられております。 ハワイやフロリダから送られてくる苗木は、土もつけずに送られてくるため、空港や郵便局に待機し苗木を受け取るなり、生まれたばかりの赤ちゃんを抱くかのように農園まで運び、用意している鉢の中へ植え変えていきます。「長旅ごくろうさん」「元気に育ってください」と祈りながら植え変えていきます。

こんなに沢山の苗木と出会える機会などそうそうあるものではなく、嬉しい誤算です。 台風のおかげだと感謝すべきでしようか。何百という多くの苗木を前に、この中から順 調に成長し、1度でも実を付け完熟迄 育ってくれるのは何本あるだろうか。そんなこと を思ったりします。 昨年は、ロンガンという果物が7年目にしてやっと実が成りました。

グアムで初めて実ったロンガンは、どんな味だろうかと期待に胸を膨らませていました。それが収穫を目前にした7月の台風で、味をみることなく全て落ちてしまいました。 多くのロンガンの木を失い、残った木も葉っぱは無く枝だけでした。失望しましたが、南国の恵まれた自然環境の成せる技と言うべきか、また一気に芽が出て、花が咲き実が成り始めました。

再度収穫出来る喜びに包まれました。その喜びもつかの間12月8日に猛烈な台風が襲来し、またしても順調に育っていた実は全て落ち、木は根こそぎ持っていかれ、どうにか助かった木も今回は時間の経過と共に枯れてしまいロンガンの木が農園から姿を消してしまいました。

今回の苗木の注文の中にも多くのロンガンの木が含まれています。全てのロンガン の苗木はハワイから着いており、順調に育っています。そのロンガンの木を前にいろ いろな物思いにふけったりいたします。「また、1度も食べずに失うのだろうか。」「せめ て一つでも食べて見たい。」 順調に育つ木、枯れていく木、園内の多くの木にそれぞれの思い出があります。

史上最も激しい強風に痛め付けられた園内の多くの木、失ってしまった木、傷を負いながら、支えられながら育っている木、これから植え付けする苗木。グアム島はこれ から乾期を迎えます。特に今年はどの木も台風でショックを受けており、水の確保や水やりに目が離せません。

「立っている木を見る」と書いて「親」と読みますが、誰が付けたか凄い人もいる ものだと感心します。まさしく的を得た言葉であり、普段何気なく使っている言葉 の一つにも、こんな深い意味があったのかと、草木の手入れをしながらやっと認識 したりいたします。

昔の日本人を偉大さや日本文化の素晴らしさの一端を感じさせ られます。 昔の人達は各分野で素晴らしい功績を残していますが、どうして成し得たのかを考 えていくと、それは昔の人々の生活環境にあったのではないかと言う結論に至りま す。昔の日本と言えば、貧しさと戦う農耕民族でもありましたが、これが世界に誇れる多くの日本文化を生んだ恵まれた土壌の一つではなかったかと思います。

自然界を相手にする生活には、自分の力ではどうにも出来ないことが多くあります。 どんな事態でも耐えに耐え、我慢をし、創意工夫をしながら勇気を持ち立ち向かって いかなくては生活できません。しかも、世界に類のない日本の豊かな四季の中で、自然界の厳しさや優しさを受け、豊かな情緒を持った人間が育ったのではないかと思います。

また、農業の歴史を調べていても、世界中に日本人が貢献している足跡が多く残されていて驚くと同時に、貧しくとも勤勉で努力家の日本人像が浮かびあがり、世界中の人々から愛され尊敬されていたことが伝わってきます。

グローバリズム、ボーダレス社会と言われますが、経済繁栄に都合の良いものだけが残り、努力もしないでお金を得られれば何でも良いといったような風潮が見られ るような気がしてなりません。そのような中で、もはや日本文化は育たず、安全な日本の生活環境は変り、努力することも耐えることもできない人が増えて行くのではないか と危惧しています。

たとえ、厳しい生活であっても人間は助け合い励まし合い喜びを分かち合いながら、 笑顔で耐えることが出来るようになって行く物ではないだろうか。それには自然の恩恵は計り知れず夢や希望や喜びを与えてくれます。 南の島の人達はお金や物には、日本人のように価値観を求めていませんが、なんと良い笑顔と共に生活していることでしようか。

そんな生活のなかに何か生きる喜びというか人生の大切な物が隠されているような気がしてなりません。人にはそれぞれの人生があり批判する事は出来ませんが、変り行く便利な世の中には反発し警告していきたい気持です。人を殺すには刃物はいらず、お金と物と便利な環境に置いておけば、生きる能力はなくなっていくでしよう。

多くの文化を生んだ昔の日本の生活環境の中にこそ、大切な価値観があるのでは ないだろうか?自然と共存の中に幸せな夢を託すことが出来るのではないだろうか?そんなことを考えていると、自然を愛する人達が集まり楽しめる施設を作りあげていきたいという思いが強くなり、どんな事態になろうと頑張っていこうという熱い思いが涌いてくるのです。

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濱本久允

濱本久允

ハマモトガーデンズの開拓者 濱本久允は昭和22年に愛媛県で生まれました。オーナー濱本久允の自然に対する向き合い方や思いを綴ってまいります。