長年の夢であった「穴窯」が完成しました

穴窯

今年もあっという間に半年近くが過ぎ去りました。気が付けば「フルーツワールド便り」はこれが今年初めての発刊になります。 ずい分長い間お便りをせずご無沙汰してしまったと反省しております。

昨年は新型肺炎、イラク戦争など観光業にとっては逆風が吹きまくった年でした。 グアムの観光業も例外ではなく非常に苦戦を強いられ、私どもも苦しい一年間でした。 今年に入ってから徐々にではありますが、本来の活気を取り戻しつつある感じがします。

私どもの業績も回復傾向にあり、久しぶりに明るさを取り戻しております。多くの出来事があった中で特筆すべきは、長年の夢であった「穴窯」が完成したことです。 窯を作るにあたって困ったのは、私の回りには電気やガス窯を持っている人はいても、薪を焚き続ける「穴窯」や「登り窯」の経験や知識を持っている人がいないことでした。

窯を作る材料にしてもグアムで手に入る物は何も無く、試行錯誤の末、耐火煉瓦やセメントを中国から取り寄せ、自分で窯の設計まで手がけました。 陶芸の窯を持つことは夢でもあり、まして実現するとは思っていませんでしたので喜びもひとしおです。 結果の分からない不安と期待と心地よくも強烈なプレッシャーのなか、すでに今年1月には初窯を焚き、4月には2回目の窯を焚きました。

4月に行った2回目の窯焚きは、グアムのテレビ局がドキュメンタリー番組として取り上げたいとのことで、膨大な量の薪の準備から始まって火入れ式、4日間も昼夜焚き続ける光景、刻々と変わる窯の中の様子、窯を閉め、窯出しの日まで全てを密着取材しました。 グアムの皆さんへ教材として、新たなグアムの文化として、多くのメッセージを含んだ「グアムの陶芸番組」として放映されることでしよう。  「穴窯」は、いろいろな窯の祖形にもなる窯で最も古く、最も不経済といわれますが、自分が作りたい作品を狙うことのできる唯一の窯でもあり、それが全ての欠点を補っても余りある喜びを与えてくれます。

穴窯
穴窯

作品は備前焼や信楽焼に代表される自然釉(炎と灰と土の融合で自然釉をだします)のかかった作品が完成します。 自然に勝るものないと思いますが、素晴らしい作品が出来てきます。  陶芸の世界に強く引き寄せられた動機は、一つの備前焼の茶器を手にした時からです。毎日、使うたびに違う表情をし、使えば使うほど、見れば見るほど重厚のある釉薬がついている。 これが本当に何の釉薬も付けないで、何日も薪を焚き続け、燃える薪の炎と、作品に掛かる灰と土でこんな自然釉というのが出てくるのか。想像できない世界があることに驚いたものです。

昨年から今年にかけての私の生活は、観光客が帰られ、日常の園内の仕事が終わると窯を焚く薪の準備に追われ、暗くなれば作陶に励み頭の中は窯焚きの心配と作品作りとでいっぱいで、目がさめれば時間に関係なく轆轤(ろくろ)の前に座り作品づくりをしていました。 文化を学ぶ、芸術を学ぶという事は良い作品を作ることや、技巧だけを学ぶことではなく、創造性を培い、芸術を理解し、それを基に生活全般を変え豊かな心を養うものと言われます。 緊張のある毎日の生活から、物やお金を追い求める生活には無い心の充実感を味わうことが出来ました。

薪を焚き続けて自然の釉薬がかかった作品を見るにつけ、自然界の妙技に高鳴る感動を覚えます。 いつの日か、価値観を共にする人たちと一緒に、良い汗をかき、薪を割り、作品を作り、寝ないで窯の薪を焚き続け、体力の限界まで挑戦し、同時に素晴らしい自然界の恩恵である作品を手にしてみたいものだとおもいます。

フルーツワールドの求めるテーマは自然です。 今回の陶芸の窯は、フルーツワールドの大きな宝物であり、子供たちの大切な教材としても利用していきます。 窯を見ても、完成した時はただの物体ですが、火が入りひと窯でも焼き上げますと生き物へと変わってきます。 フルーツワールドの窯も物体より、魂の入った生き物へと変えていかなくてはいけない。そんな気持ちで毎日作業に励んでいます。

穴窯

穴窯

穴窯

穴窯

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濱本久允

濱本久允

ハマモトガーデンズの開拓者 濱本久允は昭和22年に愛媛県で生まれました。オーナー濱本久允の自然に対する向き合い方や思いを綴ってまいります。