台風後、一気に蘇る植物達の回復力のたくましさには大いに励まされ、 生きるという事を教えられる思いがいたしました。
園内には、今も大きな木が根こそぎ掘り起こされて横たわっています。この大木は、 根の長さを一本につなげれば地球を何週も出来るほどの想像を越える根を張り巡らして育っていました。 生きるために必要な根が掘り起こされれば、生き続けることは出来ないはずですが、 少しでも根がついていれば新芽をだし、信じられないスピードで回復していきます。
この状態を人間に例えるならば、体の循環機能は麻痺し手足は思うように使 えず、完全に生きるバランスを失った状態ではないでしょうか。 そうしてみると、僅かだけ残っている根っこに十分な栄養補給をしても生き続ける事は、 不可能な感じがしますが、植物の場合は、倒れた大きな幹のいたるところから無数の若い命が芽生え、 以前にも増して勢いよく育っていきます。
生き物としての人間にも同じことが言えるのではないでしょうか。窮地 に陥れば、何か信じがたい本能的な力が作用し、体の構造までも変わっていくような気 がします。
“火事場のくそ力”といいますが、台風以後私の体にも変化が起きている事を感じました。 休みもなく昼食抜きの日々を送っていても疲れがなく、天気が悪く雨に打たれて体調を崩していたときも熱 も出ずに、仕事が続けられました。毎日、頭のてっぺんからつま先まで緊張感に包まれ、 今まで怠けていた細胞も、緊急事態発生に対して総てが活性化していると思 わずにはいられない状態が続きました。
僅かに残っている根っこのどこに、あの新芽を一気に吹き出すエネルギーがあるのだろうか。台風後の園内では、何か想像を絶する生命力の強さと、生き物としての神秘性を感じつ事ができました。
僅かばかりの根っこが残れば、枝が折れ幹が折れ、葉っぱがなかろうと一気に回復していく植物の生命力に、生き物としての人間にも当てはまる不思議な力の共通点を見た思いがします。